水資源

水資源問題の原因

 世界で起こっている水資源問題の原因としては、「人口の増加」、「気候変動」、「水紛争」などが挙げられます。

人口の増加

世界人口の増加

 国際連合(国連)の「世界の人口推計(2015改訂版)」によれば、世界の総人口は2015年時点で約73億5,000万人とされており、2050年には約97億3,000万人になると予測されています。人口の増加はすなわち水の使用量の増加を意味します。
 国連教育科学文化機関(UNESCO)の「World Water Resources at the Beginning of the 21st Century (2003)」によると、世界の水の使用量は1950年(昭和25年)から1995年(平成7年)の間に、約2.74倍となっており、同期間の人口の伸び(約2.25%)よりも高い結果となっています。特に生活用水の使用量は6.76倍と急増しています。

水需要と水ストレス

 経済協力開発機構(OECD)の「OECD Environmental Outlook to 2050(2012)」によると、2000年時点の世界の水需要は約3,600km3であり、このうち灌漑用水が約2/3を占めています。 水需要は2000年から2050年の間に、主に製造業の工業用水(+400%)、発電(+140%)、生活用水(+30%)の増加により、全体で55%の増加が見込まれています。 2050年には、深刻な水不足に見舞われる河川流域の人口は、39 億人(世界人口の40%以上)となる可能性もあると予想されています。

 水ストレスの程度(水需給が逼迫している状態の程度)を表す指標として、「人口一人当たりの最大利用可能水資源量」がよく用いられます。この指標では、生活、農業、工業、エネルギー及び環境に要する水資源量は年間一人当たり1,700 m3 が最低基準とされており、これを下回る場合は「水ストレス下にある」状態、1,000 m3 を下回る場合は「水不足」の状態、500 m3 を下回る場合は「絶対的な水不足」の状態を表すとされています。

気候変動

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)の「第5次評価報告書(2014)」では、ここ数十年、気候変動は、全ての大陸と海洋にわたり、自然(物理、生物)及び人間システムに影響を与えているとされています。

 水資源として利用可能な水の量は、降水量の変動により絶えず変化しています。このため、大雨や干ばつなどの異常気象を引き起こしているとされる地球温暖化による気候変動は、水の利用可能量に大きな影響を及ぼします。
 
 洪水や干ばつは、世界各地で多発しており、災害疫学研究所(CRED: Centre for Research on the Epidemiology of Disasters)によれば、2015年には、国家レベルの洪水、干ばつがそれぞれ152件、32件発生し、影響を受けた人は洪水が約3千万人、干ばつが約5千万人に上ると報告されています。
 

 IPCCの「第5次評価報告書(2014)」では、地球規模での水に関する影響として以下が挙げられています。
 
  ◯ 将来予測
   ・ 今世紀末までに海面水位は0.26~0.82m上昇する
   ・ 降水量は地域によって差が激しくなる
      ・ 高緯度域と太平洋赤道域は降水量が増加する
      ・ 中緯度と亜熱帯の乾燥地帯は降水量が減少する
   ・ 中緯度の陸域のほとんどと湿潤な熱帯域において、極端な降水がより強く、より頻繁となる
 
  ◯ 観測された影響
   ・ 多くの地域において、降水量または雪氷の融解の変化が水文システムを変化させ、量と質の面で水資源に影響を与えている
   ・ ほぼ世界中で氷河が縮小し続けており、流出や下流の水資源に影響を及ぼしている
 
  ◯ リスク
   ・ ほとんどの乾燥亜熱帯地域において再生可能な地表水及び地下水資源を著しく減少させる
   ・ 水不足を経験する世界人口の割合及び主要河川の洪水の影響を受ける割合は、今世紀の温暖化水準の上昇に伴って増加する
   ・ 海面水位上昇により、沿岸システムと低平地は、浸水、沿岸域の氾濫、及び海岸浸食のような悪影響をますます経験することになる
 
 
 また、地球温暖化による気温上昇に伴い、積雪量が減少し融雪の早期化が起こり、河川流出量の減少や流出時期が早まるなど、気候変動が水資源に様々な影響を与えることが懸念されています。
 

水紛争

 日本は国土が隣国と接していないため、水紛争にはなじみがありませんが、世界各国を見てみると様々な要因により水紛争が起きています。水紛争の主な要因としては以下が挙げられます。

 ・ 水資源配分の問題(湖や河川の上流地域での過剰取水)
 ・ 水質汚濁の問題(上流地域での汚染物質排出など)
 ・ 水の所有権の問題
 ・ 水資源開発と配分の問題
 

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